久保 一平
「自然の楽しさと怖さを描くおじさん」
10年前、僕が働くキャンプ場で痛ましい事故がありました。幼稚園のおとまり保育で泊まりに来ていた園児たちが、急な増水で流され、ひとり亡くなったのです。大人の無知による事故でした。今は、登山専門のアウトドアショップを経営しているのですが、山での事故も絶えません。無知ゆえの事故が多いように感じます。山の知識を得る機会が減った今、山に関わる仕事をしている僕がやるべき活動として、登山の常識や危険性を伝えるようにしています。良質な自然体験のために、自然の危険に対して、正しい知識をどう伝えるべきか、なにより子どもたちの命を守るためにどうすればいいのか、模索しながらの活動です。 事故の多い地域の川(加茂川)の地図を作り、具体的な危険箇所を、わかりやすくイラストにしました。川での危険、ライフジャケットの重要性なども描き込んだ「加茂川MAP」を制作し、市内の全小中学校に配布しています。また、出前授業として、川の危険講座、プールでのライフジャケット体験などを行い、子どもたち、保護者の方々、教員の皆さんに、直接伝えることができています。地元の石鎚山では、年々事故が多くなっています。思わぬところにある危険や、遭難の多い場所などを盛り込んだ絵地図を作ることで、山の具体的な危険を伝えています。絵を描いてきた経験や、教員時代の経験を生かすことのできる活動をしています。
幼稚園でのライフジャケット体験。この後プールへ
地域の子どもたちと山登り
紅葉に染まる石鎚山での日の出
-profile-
久保 一平 KUBO IPPEI
絵描きになりたくてドイツの美術大学に留学するも、夢やぶれて帰国。中学美術教師を10年。その後、自然好きが高じてキャンプ場で働くことに。そして今は、アウトドアショップを経営しています。登山用品を販売しながらも、山の案内、サップ体験などを通して自然の素晴らしさと危険性を伝えています。