今の仕事に就く前は、山と人々の暮らしを結びつけるような仕事がしたかったので、家具職人をしていました。
2001年の自然學校立ち上げ当初からプログラムの企画をするなどこの仕事に携わり、今年の4月に學校長になりました。
それまでは、お客様をフィールドにご案内していましたが、今では學校長としての仕事が中心になっています。スタッフが活動しやすいような環境づくりをするなど、バックアップをするのが私の役目ですね。
お客様に楽しんでもらうためにも、スタッフ自身も自然の中で遊んで楽しむライフスタイルに親しんでもらいたいと思っています。日常的に自然の中で遊んでいないと面白いプログラムの提案もできないと思うのです。ですから、私自身も休日には息子とこの敷地内の川で遊んだり、イワナを捕ったりなどして楽しんでいます。自然と触れ合うことで、同時に楽しさや厳しさなどが学べること思うので、スタッフだけでなく、多くの方々にアウトドアを満喫してもらいたいですね。
日々の疲れた生活を元に戻すのに自然の力は必要だと思います。ですから、意識的に自然を生活の中に取り入れるようにした方がいいですね。街中を歩くよりは森や山の中を歩く方が、活力や元気が出てくるはずです。自然の中で歩くことが難しい方は、日光を浴びて歩くだけでも違いますよ。大人が元気でないと、子どもも元気にならないですからね。最近では、子どもが火やナイフを使うことは危ないので使わせないという保護者の方がいらっしゃいますが、それでは子どもたちの直接体験の機会が減ってしまうと思います。ただその一方で、意識の高い保護者の方は、ナイフワークはもちろん、山に登る、川で遊ぶ、海で泳ぐ…ということを昔の方以上に体験させているようです。また、自然体験をさせない保護者の方は、興味がないというよりも、そのような体験に教育的価値があることを知らないんでしょうね。そこで体験の格差が生まれているようです。休日に家族でアウトドアをするような文化が、この白川郷を中心に広がればいいな、とは思っているんですけどね。
また、日常生活のさまざまな変化に対応できる人間になれるのは、自然の中でアクティビティを体験した人なのではないかと思っています。自然の厳しさなどを実体験した人は、自分の芯がある人間になるだけでなく、さまざまな場面で耐えられる人間になれるのではないかと思っています。
自然學校の敷地は約52万坪もあります。
しかし、プログラムを実施するのにこの敷地内にこだわることなく、白川村の大自然の中で楽しむ・遊ぶ・成長するプログラムを考えようということになり、 2011年からロングトレイル用の新しい道造りを白川村と共同で取り組んでいます。2013年には任意団体として「白山白川郷トレイルクラブ」を立ち上げ、白川村から予算もいただいて運営していくようになりました。これは、村とのいい関係を築いてきた結果であり、自分たちが地域のためにやるべきことは何かということを明確にできたことも大きいと思っています。私たちは自然体験やアウトドアを楽しむお客様を増やすこと、それが何よりも村のためになると考えています。
アウトドア体験は、人間が育つ上で重要な要素だと思っています。「大人はトレイルを歩こう。子どもは森でたくましくなろう。」というのが自然學校のキャッチフレーズなのですが、自然体験は、子どもは「たくましくなるきっかけ」、大人は「活力を得るためのきっかけ」になっているはずです。そして、自然体験はそれらを実現するためのなくてはならない場であるだけでなく、国づくりのための礎だと私は思っています。それくらい重要なことを私たちは担っているという使命感をもっている人は素晴らしい指導者・リーダーになれると思います。
ビギナーから上級者まで、子どもから大人まで、季節を問わず、幅広く白川郷の自然を体感できるプログラムが満載です。
01. トヨタ白川郷自然學校のエントランス 02. 2泊3日の「子どもキャンプ」の様子。子どもたちで焚き火料理を作る 03 . 「昆虫採集工房」では、洗濯ネットを使い虫捕り網作りに挑戦! 04. 子どもキャンプでは、飯ごうでご飯を炊いたり、ドライカレー作りにチャレンジ 05. ビギナー向けのプログラム「山歩きカフェ」。合掌集落を望む、前山の山道を歩く約3時間のコース 06. 自然學校の敷地に立つ、ぶなの木