JOLAに賛同してくださっている関係団体の方々に運営委員が訪問しお話をお伺いする企画。第二弾はJOLA運営委員の佐藤が特定非営利活動法人川に学ぶ体験活動推進協議会 事務局長の斉藤隆様を訪問してきました。
斉藤さんの子どもの頃の体験、今ご自身が大切にされていることや団体のこと、そしてJOLAへのメッセージをいただきました!!!
1970年東京都杉並区生まれ。小学校4年生の時に茨城県取手市に転居したことをきっかけに自然の中での遊びに目覚める。その後、環境問題が大きな社会問題となっていた時に、大学で水環境に関心を持ち、「地域交流センター」の活動で川や教育など、地域や「くにづくり」に熱心な方々と出会いの中から、川に学ぶ体験活動推進協議会(通称RAC)の事務局長として全国組織の運営にかかわるとともに自らも指導者として川の活動や人材育成に情熱を燃やしている。
小学校3年まで杉並区の環状七号線のそばで暮らしていました。住宅街で水辺といえば善福寺川や近くの学園の噴水で遊んだ思い出くらいですね。善福寺川の水辺に降りて怒られたこともありました(笑)。そのころから生き物は好きで、カメを買ってももらったり、釣り堀に行ったりはしていました。
小学4年で茨城県に引っ越しすると周りは田園地帯。家の裏にも川が流れていてペットショップで売っていた生き物が家の周りに普通に生息している。「なんていいところだ」と思いましたね。そこからはひたすら自然の中で遊ぶ毎日でした。もう一つ思ったのは、東京の頃の友達と自然の中で遊んでいる友達との能力の違いですかね、茨城でできた友達は「行動力」が高いんですよ。「応用力」があって「適応力」がある。一緒に遊びながら友達へのカルチャーショックは大きかったですね。大人になって思うと「自然の中で遊びながらいろいろな能力を育てられている所なんだな」と改めて思うようになりました。
とにかく川とかで毎日のように遊んでいましたね。魚釣りをするようになると、少し離れたところまで自転車で行くようになったり、中学に入ると自転車で100㎞漕いで九十九里までキャンプに行ったり、どんどん行動範囲も広がっていきました。
小学4年生の時にあった家の裏の田んぼ周辺の環境が目覚めさせてくれた。親父もそういう所で育っていて、応用力が凄いあるんですよ。親父に川に連れて行ってもらって一緒に遊んでもらったりとかしたことも自然体験活動にスムーズに入ってこれるきっかけの一つになったと思います。
今の自分自身が大切にしているのは3つあります。
RAC事務局のメンバーではあるし、事務所で整った企画書を描くことはいくらでもできるけれど、現場に行って動いてみると実際そんなことないよということが沢山あります。そういうバランス感覚を常に持ち続けていたい。と、ネットワーク団体の事務局としては常に思っています。現場に行くといろいろな刺激を受けることがあって、それがまた活動の内容を深めることになり、内容が深まれば一緒にやってくれている人たちも喜んでくれる。良いことづくめです。それで事務局機能が滞ってしまうという弊害はあるんですけど…そこをフォローしてくれる人がいれば、その人たちの新たな力も発揮されるし、前向きに考えるといいことがありますね。
自分が活動をやっていると面白くて活動そのものの価値を広めるための仕事がおろそかになってしまう。指導者にありがちな傾向かもしれません。しかし、どちらも両立していかないと活動そのものの社会的認知度も上がらないし発展できません。事務作業的なものの効率化をどうするかということを常に考えています。
現場は楽しいですが、いつも自分が前面に出てやってしまうと次につながらない。次の人がいるのであれば、次の人にボールを渡していくみたいなことは意図的にやっていますね。「斉藤の丸投げ」(笑)ってよく言われるんです。後進といっても若手とは限りませんけどね(笑)。
RACとしては「川で遊び、学ぶ体験活動を普及する」それにつきますね。「そのために指導者を育成する。育成した指導者が地域で川の安全利用の知識や技術を普及していけるようにする。」という運動をもっと広げていきたいですね。川を通じて自分が「鍛えてもらった」行動力とか適応力、応用力といった室内の体験では身につけることが少し難しい能力を鍛える場として川という場所をもっともっとアピールしていきたいですね。
いずれは学校教育に「川の安全利活用教育」というようなものを位置づけられると水難事故は無くなるのかなと願っています。
2017年ライフジャケットを着用していて亡くなった子どもが2人います。おそらく原因は単純な溺水ではなくて「水圧(流れの強さ)」なんです。水圧から身を守るためにはモノをつけているだけではダメで、知識がないと身が守れません。そういうことを社会システムの一つとして普及できる機会を位置づけていきたいと思っています。
そういった体験がやがて、「人間性の回復」とか「水環境の改善」につながるといいというのが目標ですね。
先日仁淀川に行ってきましたが、透明度が高いのに生き物が豊富なんですね。ああいう川がこの近くにもいっぱいあれば良いのになぁってね思いますけれど。仁淀川で中下流域でも水際と流心を歩いていると流心の方があたたかいんです。水際の方が冷たい。要は水際から豊富な地下水が染み出てきている。常に浄化された水が川の周りから出ているんですね。そりゃきれいだわってね。それでいて生き物も豊富なので、豊かな川ですよね。
アウトドアの持っている力として思うのは3つあって、一つは「自分の実力を思い知る」ことですね。自然の中での活動はごまかしがきかないので、自分の実力を思い知ることができるというのが魅力です。特に川だと「ああ、俺もまだこれまでか」って返り討ちに合うみたいな感覚。パドルスポーツは如実にでるし、生き物をとったり、釣りなどでも実力がそのまま表れる。「泳ぎ」なんてその最たるものですね。もぐったり。そこで活動するうえでは常に自分の実力を鏡に映しているみたいなもので、そういうことって都市化された生活では感じないですね。自分の実力を知らないとムチャしてしまって痛い目に合う。そこはアウトドアの力と思います。
2つ目は初めて会う人でも一緒に活動したり、サポートしたりすると、その人の人となりが大体わかるので、その後とってもいい関係になれる。この人はこういったところが苦手でこれが得意だとか、コミュニケーションもこうしたらうまくいくのかとか、陸上ではわからなかったけど、川ではすごい能力を持っているとか。その人の新たな側面とかいろんなものが見えてくるのでその後仲良くなった気がしますね。バックボーンは少し違っても、同じ経験をしながら互いを認め合あっていくから関係も強くなっていきます。
実際に、熊本地震の時にも川の関係でつながっている仲間がメール一本電話一本でいろいろな動きをみんなでしていたので、災害時でも自然体験活動のネットワークは相互支援をおこなえる基礎ができているのだなと思いましたね。リスクのある活動を野外で行うことでお互いを認め合えるそういう機会(力)がアウトドア活動にはあります。熊本の地震の時にとても実感しました。東日本の時にも動いていましたが、熊本の地震では川の指導者が動いていましたね。災害時の相互支援ネットワークをおこなえる基礎ができる。というのがアウトドアの持つ力の3つ目ですね。
新しい評価システム「ルーブリック」ですか?あれ自体が画期的だなと思っていて、あれの普及をもっともっとやっていったら企業の人事評価システムとかか変わってくるのかなという気がします。自然体験活動団体の評価とかね。
お願いとしては、ルーブリックって文章力が高い人が評価されやすいのかな?という気がしています。多少文章が上手ではなくても行間にあるところを組んでもらった評価フォローみたいなものがあったらいいですね。「この人こう書いているけど実はどうなんだろ?」と確認してもらうみたいな。実際の審査の内容の部分なので判らないですけれど。文章がすべてではないですよね?言語化するということがルーブリックの大切なところなのだ理解つつ、行間にある熱い思いを汲んでほしいというのがお願いです。
RAC関係者の皆さん、ぜひ今年もRACからファイナリストがでるようにエントリーしてくださいね。