ジャパンアウトドアリーダーズアワード|Japan Outdoor leaders Award

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受賞者

原田順一

子供の心が読めるキャンプカウンセラーを育てる

原田順一さんは、インドアスポーツから海山のアウトドア・アクティビティーまでこなすマルチ派アウトドアズマン。自ら企画運営する4歳から中学生までを対象としたガキ大将養成キャンプでは「自然」「遊び」「冒険」をキーワードに、子供たちの自主性や個性を伸ばし、やればできるというプラス思考を育てる体験活動を続けてきた。つまり、アウトドア・スキルの向上やチームビルドによって、子供たちの意欲と自信を引き出す。これがキャンププロデューサーとしての仕事だが、原田さんにはもうひとつ力を入れてきた活動がある。拠点である湘南自然学校で16年間担当するキャンプカウンセラー養成だ。

「私たちの団体では、キャンプに参加した子供たちの世話をするチームリーダーを、カウンセラーと呼んでいます。知らない子供たちどうしが3~4日間チームを組んでキャンプ生活を送るわけですが、そこで起こる問題というのは、技術的なこともさることながらメンタルなことが多いんですね。今はコミュニケーションのとり方が苦手な子も多いので、ソフト的なところからフォローできる人材が必要になっています。

長いキャンプほど自己中心的な子が出てきます。1泊2日のキャンプでは周りをごまかせても、72時間も一緒にいると化けの皮がはがれてきて、チームを振り回す。その皮をいっぺん引きはがすのがカウンセラーの重要な役目です。このキャンプの目的は、みんなで力を合わせて楽しむものだということを、命令や指導でなく対話と行動で伝えます。たとえば、自分が逆の立場だったらどうかと問いかける。1対1で話をする時間を長くとる。共同作業を嫌がるようなら、その子がやりやすいこと、得意そうなことをやらせてみる。

自分自身が気づくまで根気よく付き合うのがカウンセラーですが、心の領域に踏み込むわけですから、なかなか大変な仕事です。将来、教育や自然体験の世界で活躍するための学びとして手を挙げても、実際に一筋縄ではいかない子供たちを前にすると、意気消沈してしまう人も多いのです。簡単に挫折しないために行なっているのがキャンプカウンセラー養成講座です」

キャンプリーダーを目指す若者たちへ

参加者の9割は大学生で、多くが小学校の先生や保育士を目指している。いずれも高い理念を持っているが、そこは若さ。想いと行動が一致していない者も…。

「とくに高校を出たばかりの18、19歳くらいは、まだまだ考え方に甘さが見られます。夢や理想はしっかり語れるのですが、子供の前に立つと一歩踏み出す勇気がない。子供たちには“頑張れ”“やればできる”と励ましているのに、自分自身は“できますかね”“大丈夫ですかね”と不安でしかたがない。子供たちのカウンセリングの前に必要なのは、キャンプの指導者を目指す若者が前向きなるカウンセリングなんです」

心の問題を解決する方法にマニュアルはない。チームの輪を乱す子の特徴も様々だ。自分勝手にふるまう。人の嫌がることばかりいう。やろうと誘っても嫌だとしか言わない。なぜ言うことを聞かないんだと声も荒げたくなるが、そこをぐっとがまんし、相手の立場になって心の中を読み解きつつ、みんなと一緒に楽しく過ごす、自主的に行動するという気持ちへ導く。それがキャンプカウンセラーの仕事だ。

「時間はかかりますが、大人が真剣に向き合っていることがわかると子供は確実に変わります。そうした経験を積んでいくことで学生たちも鍛えられます。卒業生の中には先生になった子が何人もいますが、キャンプカウンセラーの体験は大きな学びになっていると言ってくれます。結婚して子供をキャンプに参加させる人もけっこういます。キャンプのよさを知っているからこそ送り出してくれるのだと思います」

カウンセラーのマインドは生涯にわたり役立つ

近頃の学生といえば、口癖は“時間がない”“忙しい”。原田さんは、こうした言い訳には手厳しい。

「16年やっていると大学生の気質も変わってきますね。今の傾向としては、最初のモチベーションはとても高いんですよ。でもだんだん来なくなる。理由は、おっしゃるように“時間がない”“忙しい”です。数年すると社会人になるのに、それでいいのかなと思うんですよ。時間がないというけれど、電車の中では何をしているの?ひょっとしてスマホをボーっと見ているだけじゃないの。時間のやりくりもやる気次第だよね。そういう気持ちがないと将来苦労するよと、ときどきは諭します」

将来、学校の先生や自然体験活動の指導者になる大学生だけを育てているつもりはないという。キャンプカウンセラーのスキルやマインドは、どんな社会に出ても生かせる財産。そして、その技能がもっとも生きるのは、いずれ自分が子供の親になった時だ。

取材・文/鹿熊 勤

-profile-

原田順一 Harada Junichi

NPO法人湘南自然学校 リスクマネジャー

SAN~Social Active Network of outdoor education~ 副会長

1978年生まれ。学生時代からキャンプリーダーを始め、冒険教育を学び、2002年から湘南自然学校へ。子どもたちの自然体験活動を企画し、海の活動を担当。人材養成を長年担当し、子どもたちの共感者であるスタッフを育てるべく、人材教育や組織づくりに強い想いを持っている。また、ネットワークを通じて、自然体験活動をより社会に発信するつながりや、その仕組みづくりの構築を目指している。

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