森 和成
「考えることを止めてしまっていることを再起動させよう!」
10万坪規模のアウトドアリゾート「ライジング・フィールド軽井沢」は、元々、軽井沢町営のキャンプ施設でした。入口には、「キャンプ場」の看板があり、その隣には「ここはクマが出るのでキャンプ禁止です!」の看板が立っている。ここは何なんだ!? と不思議に思い、軽井沢町役場に確認しに行ってみたら「年間1,000万以上の赤字状態なので閉鎖予定です」とのこと。これはもったいない!なんとか引き継ぐことはできないかとの思いから行動開始。調べてみると所管は国有林野内なので林野庁。さらに国立公園内なので環境省。かねてからの自然体験活動を通じて子供たちの生きる力を高める場づくりをしたい!との思いを元に、企画書を作成し、霞ヶ関の各省庁に飛び込みでお伺いし、数時間ずつ話し込みました。最終的にはそれぞれ「良いですね!実現してください!」と賛同してくださったのですが、「しっかりと軽井沢町内での合意形成をはかってください」とのこと。翌日から個別に膝を突き合わせて会話させて頂いた方々は合計200人以上。一方的になりがちな説明会などは一切開きませんでした。なんとか合意形成が得られ、オープンに向けての準備は軽井沢町が大雪災害にあった年で、入口から中にすら入れず。知人にユンボを借りて一人での除雪作業からスタートした1年目でした。
立ち上げ当初も、「事業として、キャンプ場なんてやって儲かるの?」「町営でやって年間で1,000人しか集まらないところに人なんて来るの?」と懐疑的な声も多くありました。
その反面、お知恵やお力を貸してくださった方も多くいらっしゃいました。
お力添え頂けた方々は、「自然体験活動を通じ、子供たちの生きる力を高めることを目的とした場づくりをしたい!」との私の思いに、共感してくださった方々です。やはり大切なのは「人の本気の思い」であり、人生をかけたミッションであり、アイデンティティなんだな、と心からの感謝と共に実感できた貴重な体験でした。
株式会社ライジング・フィールドのミッションは自然体験活動を通じ「子どもたちの生きる力を高める」「家族の絆を深める」「人・組織の可能性を切り拓く」で、ビジョンは「『あの時の、あの体験が、今の自分の生きる糧になっている!』子どもたちが大人になった時そう振り返ってもらえる未来の大人たちで社会を埋め尽くす!」です。きっかけは私自身の「アメリカンフットボール選手としての成功&失敗体験、2度にわたる大震災での被災と支援体験、会社員時代から長年取り組んでいた社会人教育の場づくりを通じた体験で、その過程で今の社会を変えるために何が必要かを考え、そのベースが子供たちの生きる力を高めるための体験機会づくり、更には学びの最小単位かつ最重要単位である家族として学べる・成長できる体験機会づくりにあることに気づいたのです。
上信越高原国立公園の雄大な大自然を活用したライジング・フィールドの事業領域はSelf-Esteem(自己肯定感)の概念をベースにしています。
■Community:この場に来ると家族・仲間の絆が強くなり
■Learning :自分・家族・仲間の新たな可能性を発見して成長でき
■Wellness :自然環境下で個人も組織も心身共に健康/豊かになれる
自分自身を「重要感」「有能感」「好感」により自己評価できる環境を整えています。
フィールドで「ファミリーアドベンチャー」というプログラムに参加した家族の感想です。
「いつもは怖くていえなかったけど、お父さんに自分の意見をいえたのが、今年の夏の一番のアドベンチャーだった(小学生男子)」
「子どもには、私の指示・命令ばかりで意見を全然聞いてないことに気づいた(お母さん)」
「今、この家族と一緒にいられることが、最高の幸せだと実感できた(お父さん)」
さらに私も驚いたのがこちらです。
「私は、パパのこと今まで大嫌いで、一緒に歩いている姿なんか、絶対、友だちにも見られたくない!と思っていましたが、パパがこんなにカッコいいのを今日初めて知りました!(中2の長女)」「パパと一緒にずっと過ごしてきたけど、私はパパのこと何もしらなかったんだなぁ。ということに初めて気づきました(小6の次女)」パパはその場で大号泣。普段は家の中でだらっと過ごしているパパも仕事ではバリバリにリーダーシップを発揮してよい仕事をしている。でも娘さん二人は家ではそんなパパの姿を垣間見たことすらなかった。素の自分をさらけ出せる自然の中であたりまえのように複数家族をまとめあげるパパの姿を見ての素直な言葉。実際、その後も場内を移動する際に両腕に抱きつくように一緒について回る娘さんたち。「ここ男子トイレだから、一緒に入れないよ!」と、娘さんたちの腕を振りほどく、つい先ほどまでとは逆の姿。帰り際「かずさぁ~ん!ほんと来てよかったですよ~~!」と、満面の笑みと涙のパパなのでした。
「軽井沢キャンプ通学」「軽井沢サバイバルキャンプ」などのプログラムをUWC ISAK、風越学園、イートンハウス、軽井沢高校、軽井沢中学校、軽井沢東部小・中部小・西部小、町内の幼稚園や保育園などへ提供。各学校への自然体験活動の場所の無料開放、プログラム無償提供を積極的に行っています。
また、通常の一般向けの自然・アドベンチャー体験イベントやキャンプに加え軽井沢町全体を巻き込んだアドベンチャーツーリズム推進や、町内に限らず広域連携としてのPBC(Public Benefit Corporation)の立ち上げ、町内外の各施設、官庁、企業と連動して「Workation」をひとつの切り口とした「生き方改革」を軽井沢を起点に推進していきます。
毎年開催している「軽井沢ラーニングフェスティバル」では「学びをGIVEし合おう!」と教育、アウトドア、イベント、スポーツ業界など幅広い仲間たちが一堂に集まり互いにコラボレーションし合う取り組みを推進しています。「ライジングフィールドは、アクティブラーニングを主体とした時と空間づくりのソフト=人財と組織力が一番の強みであり、場所に固定されず、共に携わってくれる仲間、我々スタッフがいるところがライジングフィールド」。「和を成し、人・組織の可能性を切り拓く」をミッションに掲げ、突き進んできた30年間。これからもライフワークとして、この活動を広げ、深堀り続けていきます。
JOLAのみなさんとは顔を合わせて一杯飲みたいですね(笑)。知られていない人たちを世の中に届けるいいきっかけを掛け算で拡げられる回路になってほしい。そのためにはまずは「JOLAキャンプ」をライジング・フィールドで開催したいです。みんなで焚火を囲いつつ一杯やりましょう!
取材・文/大久保 徹
-profile-
森 和成 Kazunari Mori
株式会社ライジング・フィールド 代表取締役
株式会社プロジェクトアドベンチャージャパン 取締役営業統括
「和を成し 人・組織の可能性を切り拓く」がパーソナルミッション。元アクセンチュアディレクター。アクティブラーニングのアプローチを強みとした企業・法人向けの人材開発・組織開発を20 年以上手がけている。2014年からは「子供たちの生きる力を高める」ことを目的とした「ライジング・フィールド(Rising Field)」を立上げ、子供たちや家族に焦点を当てた体験学習の場づくりにも注力している。