戸門 秀雄
「アウトドアの水先案内人は、山河の料理人。」
「野の香り 山の味」を謳って「郷土料理ともん」を埼玉県・入間川の畔に開店したの は、1976年の4月でした。早春の野草に春の山菜、またヤマメ・イワナの渓流魚にアユ他 の川魚から秋のキノコ等々、一年を通して山の幸、川の幸に接しています。「余して採( 獲)る」は、かつてお世話になった山人たちの教えです。乱獲を慎み、敬虔な気持ちを胸 に、今も山河に分け入っています。常に山と、また手にする様々な食材に感謝を忘れるこ となく接すると、自然は私たちを快く迎えてくれます。 一方で、私は半世紀にわたり東日本各地の山人や川漁師と会い、彼らの生活誌を記録し 、その姿をカメラに収めながら、山菜・きのこ関連も含む9冊の本にまとめてきました。 私は自然に親しみたい人、さらにもう一歩先の奥深い山河の世界を知りたいという人を応 援しています。地元の小学生には授業で自分が歩んだ道を伝え、可能な限り生きた教材( 川の魚や水生昆虫、貝類)を提供しています。野性の本領発揮の子供たちに接することが できます。また学生さんや教育界を含めた社会人の方々には、自然の恵みを守り享受して 家族と山河に生きた人たちの姿を講演等で伝えています。自然と共に生きた先人たちは、 日本版“森の生活”を実践した、アウトドアのパイオニアです。 私も、日々天然食材を手に、店に集う多くの人たちにアドバイスを送りながら、この世 界の水先案内人として皆様のお役に立ちたいと思っています。
魚野川のカジカ稚魚放流。著書『川漁』所収
地元の入間川小学校で入間川の歴史を語る
初心者の山菜・キノコ採り、渓流釣りも応援
-profile-
戸門 秀雄 TOKADO HIDEO
『郷土料理ともん』店主、漁撈民俗研究者
1952年埼玉県生まれ。「郷土料理ともん」店主。漁撈民俗研究者。元埼玉考古学会会員。 趣味の釣りと食材集めで各地の渓流を訪ね、職漁師の暮らし、漁法、漁具を記録。ダイワ 精工のアドバイザーも務め、渓流竿「碧翠」「碧羅」を共同開発。著書に『溪語り・山語 り』『職漁師伝』『川漁 越後魚野川の伝統漁と釣り』(第24回日本水大賞審査部会特別 賞)など。自然関連の講演や料理の寄稿も多い。