白川勝信
里山を利用して,地域と自然の輝きを未来へ
中国山地は「たたら」の山でした。炭を焼いて製鉄し、草原で育った牛に引かせて出荷していました。山の形が変わるほどに砂鉄を掘る一方で、薪炭林や草原が持続的に使われていた、共存の山です。
日常の中で山が使われなくなって半世紀が過ぎ、資源利用の知恵や技術を知る人が減り続けているのが現状です。今、そしてこれからの時代を生きていくためには、山をもう一度資源として捉え、持続的に利用するための理念、知識、そして技術を併せ持つ人材が必要だと考えています。
湿原や草原の保全を続けてきた芸北地域で、2012年から「せどやま再生事業」、2015年から「芸北茅プロジェクト」を始めました。放置されていた森や草原にあるバイオマスを、地域みんなで使うための新たな仕組みです。生態系だけでなく、経済、エネルギー、文化など、様々な分野で生じている問題を解決するために、社会が変わりはじめました。その変化を加速させているのが教育です。
-profile-
白川勝信 Katsunobu Shirakawa
北広島町立芸北高原の自然館 主任学芸員
広島県芸北地域で、湿原、半自然草原、里山林など、地域の人間活動によって維持されていた生態系の保全をテーマに博物館活動を展開している。 子ども、事業者、行政、ボランティアなど、様々な主体による自然への関わり方を見直し、新たな仕組みを組み込みながら、地域と自然を将来に残していく道を模索している。2003年4月より芸北高原の自然館に学芸員として勤務(現職)。専門は生態学(博士(学術))。