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自分という自然に出会うチャンス

自分という自然に出会うチャンス

初めて自分が子どもを産んだ瞬時に感じたこと

出産は自分という自然に直接向き合う、最も強烈で最大のチャンスだ、ということでした。ある日、自分と違う生命体が胎内に宿り、古代の海水濃度と同じといわれる羊水の中で、生命の進化の過程を短時間でくりかえし、子は出生するものの人類は未熟児で、他者の助けなくては生きられない。これを育てる母体も、自らの意思とは関係なく、着々と子孫繁栄の作業のために驚くスピードで変化していきます。妊婦自身はその自然の営みを受け入れるしかなく、必死に学び、変化を受け入れ、それに適応していきます。出産の日もそれぞれであり、全ては母体と子の状態によることも出産を通して知りました。これらは大変動物的な歩み――というと、原始的な発展性のないニュアンスに受け取られるかもしれませんが、私は出産にて生きる力とは何かという原点に戻ることができ、また、神秘的な世界観も含む大自然の摂理の中に人類は存在しているのだ、と強く思わざるを得ませんでした。生まれた子も同様で、必死になって生きるための行動を自らする姿には、愛おしさとともに、生命の力強さへの感動を覚えます。

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ただし、この思いは全ての経産婦がしているわけではないことも知りました。特にベビーブームの時代には、管理された病院でスケジュールを組んだ出産にコントロールされ、母親自身が胎盤の出る後産を意識していなかったり、子の取り違えがあったりしました。ほかにも意図しない誕生の環境により、人という生命の自然ときちんと向き合えない事情は、世界中のあちこちにあることでしょう。
アウトドア(自然)は人類だけでなく、多くの生命が暮らしている世界です。そして衣食住を安定させない、生きものにとって未完成な環境がそこにあります。野生生物の営みが私たちの目の前に直接なくとも、同じ「自然」の環境にふれ、過ごすことで、私たち人間の中にある自然が呼び起され、創造的な人づくりの原点に戻れます。望まない変化も肯定的に受け入れ、自ら生き暮す社会を創っていく訓練ができる場所です。こどもを育てるキャンプを仕事とし、さらに出産を経て感じることは、多様な価値観や社会の都合が氾濫する現代だからこそ、自然という場が重要な役割を果たすと思うのです。

-writer紹介-

中澤朋代 Tomoyo Nakazawa

JOLA運営委員/松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科准教授/NPO法人日本エコツーリズムセンター共同代表理事

1973年岐阜県生まれ。
幼少期に自然豊かな地で育つも、大人になり自然に生かされ活かす力は気づきと学びが必要と感じている。学生時代に野外教育に出会い、民間の自然学校を経て現職は松本大学総合経営学部観光ホスピタリティ学科でエコツーリズム、環境教育を専門に扱う。

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