ジャパンアウトドアリーダーズアワード|Japan Outdoor leaders Award

MENU

受賞者

小林政文

自然のチカラで観光業を変える

主催する自然体験プログラムへの案内者数は、のべ1万人。こうした企画を立案しガイドする現場の指導者もこれまで1000人以上養成してきた。沖縄県名護市にあるがじゅまる自然学校代表の小林政文さんは、ときに失敗やリスクもある自然体験は、人間の感覚を研ぎ澄まし、成長へ導くすばらしい教育ソフトだという信念がある。

「うちはカヤック体験が多いのですが、長時間漕ぐことはしていません。なぜなら、操航技術の習得がプログラムの目的ではないからです。カヤックはあくまで沖縄の自然を実感するための手段。目的は漕ぐことではなく、むしろ上陸先にあります。たどりつく浜の光景を漕いでいるときから想像し、海には干満があることや、さまざまな生き物が棲んでいることを実感してもらう。何が楽しかったかという感じ方は人それぞれでいいんです。そこに学びの本質があると考えているので、みんなが同じ感覚に浸るような誘導は、あえてしていません」

 

海のレジャーを環境教育に

人気観光地である沖縄県の大きな資源は、自然だ。沖縄観光は今も自然体験とニア・イコールの関係にあるが、小林さんが活動を始めた10年ほど前、体験を売りにしたサービスには参加者の学びや成長とは縁遠いものも少なくなかった。

たとえば、浜辺でのバナナボート。スリルがあるので修学旅行生には人気が高いものの、引率する先生たちからは評価が低いという声が多く耳に入った。学習効果を期待できないからだ。修学旅行である以上、旅には学びがなければならないというのが学校旅行の理念である。

「バナナボートが悪いわけではないんですよ。問題はそれに終始してしまうこと。カヤック体験がそうであるように、バナナボートを入り口に沖縄の自然を理解してもらうプログラムだってできるんです。沖縄の観光業は成立時からレジャー業です。目を引くような体験があれば、質はともかく観光客はやってくる。それを次々にさばいていくのが仕事だという感覚でした。美しい海という資源に依存していながら、その価値を本質まで掘り下げてみようという意識が希薄だったのです。

観光はそれでいいのか。提供するプログラムの質を高めていかなければ、王者・沖縄といえども飽きられてしまいます。海の環境悪化も看過できないところまできていますし、離島では過疎化の問題も深刻です。観光業に携わる人たちのサービス意識を変えることも、私たちがじゅまる自然学校の仕事でした」

沖縄県最大のダイビングショップの依頼で、3年の時間をかけ組織全員が参加する人材育成を行なったことがある。レジャーから自然体験へ。意識をチェンジし、環境重視の流れに入った社会のニーズを先取りすることが、海をフィールドとする仕事の発展と誇りにつながることを力説した。組織に属していない個人事業者にも積極的に声をかけ、自らファシリテーション役を務めながら、沖縄の観光業が目指していくべき方向やアイデアを話し合ってきた。

 

過疎対策にもなるエコツーリズム

沖縄本島の小学生を離島に連れて行って自然体験をさせるという県のプロジェクトは、参画して8年目に入った。自治体のある島はすべて回り、地元のキーマンとネットワークを築いてきた。ともにプログラムを作り、ガイド方法のアドバイスもする。

「まずは自然に寄り添った体験学習型のツアーモデルを島の人々とともに作る。本島の小学生たちの反応を見ながらブラッシュアップし、通年型の受け入れシステムにつなげていく。実際には人が少なすぎ、人材育成すら難しい島もあるのですが、身の丈にあった新しい観光スタイルを構築することは、離島の過疎化対策にもつながるはずです」

ヨーロッパでは、インバウンド客が増えすぎ受け入れ規制を始めた観光地もある。量より質の時代の足音が聞こえ始めている。自然体験プログラムが重要になるのは、むしろこれからだと小林さんは語る。

受け入れる側だけでなく、旅をする側の意識改革も重要だ。物見遊山型の観光から、“地域の光を観る”という旅の本質にシフトするには、受け入れ側の意識変革とともに、社会全体の価値観教育のような機会も必要だと考える。その理想に近い位置に立つのが野外教育や環境教育だが、教育界全体から見れば、まだまだ評価は低い。旅行計画の候補に、当たり前のようにエコツーリズムが挙がる。そんな世の中を一日でも早く到来させるのが、小林さんの目標である。

取材・文/鹿熊 勤

-profile-

小林 政文 Masafumi Kobayasi

ホールアース自然学校沖縄校がじゅまる自然学校 代表/一般社団法人沖縄体験観光協会会長/NPO法人沖縄県カヤック・カヌー協会理事/NPO法人沖縄エコツーリズム推進協議会企画検討委員及び特別研究員

1978年静岡県富士宮市生まれ。2005年からホールアース自然学校へ。2005年9月からがじゅまる自然学校で活動。名護市内・真喜屋地域での自然体験・環境教育・環境保全の実践を大切にしながら、主に沖縄県内・離島各地にて、プロデューサーやファシリテーターとして持続可能な地域づくりや人材育成、体験観光プログラム開発に関わる。沖縄県内の自治体・関係団体・異業種の活動にも積極的に関わり、社会貢献を目指し活動している。

お知らせ一覧

お知らせ
2018.11.19
JOLA 2019 エントリー期間について: 11月30日まで延長となります。
press
2018.10.29
[メディア掲載]自然の中に子ども誘おう|下野新聞(2018年10月28日)
お知らせ
2018.09.23
JOLA 2019 募集開始のお知らせ
press
2018.08.29
[メディア掲載]森林守る意識、次代に継承|山梨日日新聞(2018年08月29日)
press
2018.07.25
[メディア掲載]森の魅力を紹介、評価|山梨日日新聞(2018年07月25日)