ジャパンアウトドアリーダーズアワード|Japan Outdoor leaders Award

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宮村連理

子どもたちの学びを、森の再生から引き出す

宮村連理さんが所属する緑のダム北相模は、「森をつくる」「森をいかす」「森とつなぐ」の3つの考えのもと、放置され荒廃が進む暗い人工林を、生物多様性にも富む明るい森に再生する活動に取り組んでいる。

主な作業は間伐だが、切るべきスギやヒノキにはどれも同じものはない。太さや長さが同じように見えても、曲がりや枝の張り方で木の重心は変わる。また、残すべき木との関係からノコギリの入れ方や倒し方も毎回違ってくる。切り倒した木を運び出す手間や手法は、地形にも大きく左右される。一連の作業では、つねに安全がセットで求められる。ひとくちに伐採というが、その作業のなかには林業という産業が蓄積してきた多くの技や知恵が詰まっている。

放置林の実情が肌でわかると、今度はその背景にある社会の課題が視野に入ってくる。東京学芸大学付属小金井市中学校の教員でもある宮村さんが力を入れているのは、 間伐作業を子どもたちのさまざまな学びにつなげていくことだ。

「森の中でもは想定外のアクシデントがしばしば起こります。その経験自体が貴重な学びなのですが、絶対に確保しなければならないのは身の安全です。髪型が崩れるからヘルメットはかぶりたくない…なんていってられません。現場で伐採に立ち合うと、ピンと張りつめた空気が肌から伝わり、ヘルメット着用の意味をたちまち理解します。

私自身が作業で森に入るときはチェーンソーを使いますが、生徒を引率するときは手ノコで切らせています。人力での作業は時間がかかりますが、たくさんの発見があります。ノコの刃を入れる角度、力の入れ方、あるいは力の抜き方。丸太に切るときは、刃が木の奥へ入っていくにつれて木がたわみ、ノコが挟まれてしまいます。そんなとき、ほかの子が少し持ち上げてあげるとスッと摩擦から解放される。発見を通じて自然にチームワークができてくるんですね。

私たちは林業の効率化を学んでいるわけではく、林業の中にあるさまざまな知恵を学びにつなげ、教育に新たな可能性を探り出したいのです。ですから、あえて手ノコなのです」

教科書や新聞の「森林問題」が腑に落ちる

とはいえ、伝統に固執しているわけではない。新しい技術のなかにも多くの学びがあるので、子どもたちが積極的に触れる機会を設けている。ポケットコンパスという簡易測量器、数メートルの誤差しかない高精度のGPS、作業を全方位的に把握でき、安全管理の重要性がひと目でわかる360度カメラなどだ。基本的な原理や使い方を教えると、あとは子供たち自身がゲーム感覚で吸収し、データも蓄積してくれる。こうした機器を使い、所有者間の土地境界をデジタルデータ化するといった作業にも挑戦している。

「実際は公図と合わないこともあるんですが、森には境界線という概念があり、それを測る方法があるということを知ることが重要なんですね。面積を測ることができれば木の適正密度も割り出せます。この広さなら何本まで切れるかといった判断です。熟練者は現場を一目見るだけでわかりますが、私たちはデータを使わないとわからないので、木に番号をふっています。そうした地道な記録作業が好きな子もいます」

活動に参加した生徒たちの感想に共通するのは、教科書や新聞の記述ではピンとこなかった林業問題が、すんなり腑に落ちたというものだ。実際に森へ入り木を切る体験をしなければ、受験のための暗記項目のひとつで終わっていただろうとも。

どうすれば森は元気になる? 子ども自身が考える

都会の子どもたちが間伐に挑戦すること自体が「森をつくる」「森をいかす」活動になっているわけだが、もうひとつの柱である「森とつなぐ」とはどんなものだろうか。

「間伐材で作った積み木3万個を使ってイベントを開催しています。東京駅、アンコールワット、人工衛星のハヤブサなどをモデルに、積み木で大型の像を作ります。接着剤を使わず、設計図も書かないというのがルールです。そのかわり、それぞれの世界の専門家に自分たちでコンタクトをとり、写真などの詳細な資料を集めてきます。それをもとに積み上げていくのですが、ここでも間伐作業で培ったチームワークが生かされています。完成までの苦労の様子、イベント修了後に一瞬で崩すフィニッシュまで動画で撮影、時間を縮めてSNSで発信していますが、とても人気があります」

林業は、そして森はどうすれば元気になるのか。子どもたち自身がそこまで考えるようになったことが最大の成果だと宮村さんは言う。体験を通じて学んだことを、昨夏には中学生が日本環境教育学会で発表。この春には高校生が日本森林学会で発表した。

取材・文/鹿熊 勤

-profile-

宮村 連理 Miyamura Renri

NPO法人緑のダム北相模 副理事長

東京学芸大学附属小金井中学校 教諭

東京生まれ。小学生のとき、東京学芸大学「子どものための冒険学校」への参加をきっかけに野外活動に興味を持つ。同大学院在学時に損保ジャパン環境財団(当時)の学生プログラムで活動、公立中学校総合学習の支援などを行い、教員の道へ。2018年より同大附属小金井中学校勤務、同大環境教育研究センター兼任所員。学生時代より同財団が支援する森林NPO緑のダム北相模に参加、2016年より同会副理事長。

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