ジャパンアウトドアリーダーズアワード|Japan Outdoor leaders Award

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バハラム・イナンル

食と農からサステイナブルな生き方を考える

24歳のとき、平和を求めてイランからひとり日本へやってきた。イラン・イラク戦争のときは複数の同級生が戦死。ボランティアのため前線近くへ行った知人の中にも、人質になったり、地雷を踏み大けがを負ったり、そのまま戻らなかった人がいた。

そんなとき励みになったのが、イランでも高視聴率になった日本の連続テレビドラマ『おしん』と、日本の武道だった。心と体を鍛錬し己を高め、もし可能なら、もっと日本の文化に触れ、おしんのように心美しく努力を惜しまない女性に出会いたい。それが訪日の動機だった。

横浜に住んでいるときに阪神淡路大震災が起きた。戦争による混乱体験を生かすことができるかもしれないと、ボランティア活動に急行。地図に記された日本語が読めないなどのハンディにも直面したが、支援の手薄な地区を重点的に回り、必要なニーズを聞き出して物資の配給や行政サービスにつなぐ任務を果たした。

「日本には『情けは人の為ならず』という諺がありますね。僕の好きな言葉です。イランにも似た諺があります。人間にとって大事なこと。それは国や言葉は違っても変わらない。僕はこれからもこの諺の意味を大事に日本で生きていこうと思いました」

 

農業は自然探究。奥が深く難しいから面白い

代表を務めるPeace&Natureのミッションは3つだ。ひとつは安心な食と環境を自分たちで作る活動。ふたつめは、未来のグリーン・リーダーの育成。グリーン・リーダーとは、地域の環境や地球環境の課題を理解し、解決に向け行動できる人のことだ。そしてもうひとつの活動目的は、国籍の枠を超えて共に行動し、サステイナブルな取り組みに関わる情報を世界へ発信していくことだ。

そもそものきっかけは、結婚して生まれた子供がアトピー性皮膚炎だったことだ。調べてみると原因には食生活が深くかかわっていることがわかった。

「神戸大学名誉教授の保田茂先生に出会い、環境と食のつながりの大切さを教えていただきました。保田先生の農業塾に通い、農薬や化学肥料を使わない方法について学び、田んぼや畑を借りて実践するうち、外国人の友人たちからも参加させてほしいという要望が出るようになりました。里山の手入れなどもみんなで始め、少しずつ活動の幅が広がりました。農薬や化学肥料を使わない栽培にずっとチャレンジしています。時には失敗しますが、気づきや学びがたくさんあります。「農業はサイエンス、つまり自然の探究だ」というノーベル生理学賞・医学賞を受賞した大村智先生の言葉にも感動しました。そう、難しいけれど面白いんですよ、自然と向き合うことって。奥が深い。地域で活動を続けるうち、日本の農業や農村が直面しているさまざまな課題についても教えられました。耕作放棄地や放置竹林の拡大。そして野生動物が増えて田畑を荒らすなど、課題はたくさんあります」

空き家や休耕地を、さまざまな体験プログラムを通じて学びの場に変える。Peace&Natureではグローバルな人々が、さまざまな形で共に活動している。農業体験、食育、ヨガや座禅、ネイチャースクールもあり、国際学校や大学、企業との連携も始まった。今は再生した空き家を可能な限り(100%を目指し)再生可能エネルギーで賄うエコハウスも運営。学生や社員がプログラムに参加し、たとえばSDGsが掲げる課題などについて実践的に学んでいる。インターンシップの受け入れも継続的に行なっている。今後はソーシャルビジネスとしてサステイナブルなエコハウスづくりに力を入れていく予定で、共に行動できるエコフレンドリーなパートナーを募集している。

 

今こそ日本は「温故知新」の意味を振り返るとき

「日本の農村には持続可能性のヒントがたくさんあります。僕がもうひとつ大好きな言葉が温故知新です。古きをたずね新しきを知る。まさに今こそ日本は温故知新のときではないでしょうか。僕が行なっている稲作は日本古来の方法です。収穫後に残ったわらは地元の人たちが再利用し、樽を包む菰(こも)をつくっています。使われないことで増えて問題になっている竹も、宝角(ほうずみ)合金製作所というCSRパートナーの協力で有効活用しています。伐り出した竹は、兵庫県発明賞を受賞した同社のバンブーミルという粉砕機で粉にし、再生した畑にすき込みます。竹のパウダーは糖分やミネラルが豊富で、土の中の微生物がすごく元気になり、土を肥やしてくれます」

小口融資による女性の経済的自立を支援するグラミンバンクを創設、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスさんが登壇する大阪のセミナーに参加したとき、バハラムさんは質問の機会を得た。「これからの教育についてどう考えているか?」。尋ねると、ユヌスさんの回答は次のようなものだった。

教育のしくみは大きく変わる必要がある。自然環境とコミュニティーを大切に思える子どもに育てることこそ、これからの教育の役割だ――。

「わが意を得たり、の思いでした。僕たちのやろうとしてきたことは間違っていない。確信を持つことができましたね」

ニューヨークの国連本部には、13世紀のイランの大詩人、サアディーが残した次のような一篇が掲げられている。

<人類はみな、ひとつの本質からなり、手足と同じようにひとつひとつつながっている。ゆえに、どこかが痛めばほかの部分も痛みを感じずにいられない。汝(なんじ)がもし他人の災難に胸を痛めないなら、そのときはもはや人と呼ぶに値しない>

バハラムさんは日本に骨を埋めるつもりでいる。自然の中でサステイナブルな生き方を実践しながら、人間本来の幸福についてより深く思いを巡らせたい。また、人生には今後もさまざまな困難が待ち受けているだろう。しかし、サバイバル精神とスキルがあればきっと乗り切れる。そうした確信を「平和につながる人づくり」につなげ、国境を超えて広げていきたいと考えている。

取材・文/鹿熊 勤

-profile-

バハラム・イナンル Bahram Enanloo

NPO 法人 Peace & Nature Founder & CEO 代表理事/ 環境活動家

イラン・テヘラン生まれ。イラン・イラク戦争を体験し、学生時代から日本文化に触れ、黒澤明監督の映画に憧れ、武道を学んでいたこと、また当時NHKのおしんが、中東で 大人気だったことも影響し、24歳の時に初来日。”和のこころ”を大切にする、平和の国日本が大好きである。阪神淡路大震災の際、横浜からボランティアで初めて神戸を訪れ、人々の逞しさと明るさに感銘。2019年神戸市環境局より環境功労章受章。神戸PRアンバサダー就任3年目。在日30年の地球人。

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