ジャパンアウトドアリーダーズアワード|Japan Outdoor leaders Award

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受賞者

木名瀬 裕

「できない!といわずになんにでもOK!なので“がってん”と呼ばれています」

 

中学時代は日本を歩いて横断するような子でした。高校時代は沖縄まで自転車で行ったり、北海道を歩いて1周したり。日本は行き尽くしたから18歳で海外に渡りました。その後、帰国して拠点を北海道に移し30年の歳月を通じて国内27河川でプロのアウトドアガイドとして3万人以上をガイドしました。

そんな活動の中起こった阪神淡路大震災では、「力になりたい!」と思う気持ちだけで現場に駆けつけました。みなさん寒さに震え希望を失っています。とにかくあるもので何とかしなければ、との思いからチェーンソーで倒壊した家の柱を玉切りにして暖を取る燃料をつくりました。ふと周りを見渡し、「生きるか死ぬかの状況なのにみな火を起こすことさえ忘れてしまっている」事実に愕然としました。いつの間にか自然と人の暮らしがかけ離れてしまったのではないか? そして東日本大震災。そこで目にしたのは変わらない人々の姿でした。阪神淡路大震災から東日本大震災まで延べ5万人ほどにアウトドアでの生き延び方をガイドしたのですが、世の中は何も変わっていなかった。私の残りの人生を考えるなら今伝えるべき相手はこれからを生きる若者たちだ、という思いに突き動かされここまで来ました。

北海道での若者への自然体験でご縁をいただいた元サッカー日本代表監督の岡田武史さんから、「“がってん”、実はサッカーだけじゃなく生きる力、誰かの背中を押す、人の遺伝子のスイッチを入れるようなことがしたいんだ」というお誘いを受け、愛媛県今治市で「株式会社 今治.夢スポーツ」のヒューマンディベロップメントグループとして「しまなみ野外学校」を立ち上げました。

無人島で行う「冒険キャンププログラム」は里山の野営場からスタートします。里山は人間の世界と自然とが有機的に交わる場所で、人の暮らしは自然と地続きにつながっていて、町の中で無意識に必要だと思っている「もの」や「こと」をそぎ落としてほしいからです。その後、シーカヤックで島に乗り込む際に荷物を捨てる(置いていく)というチャレンジもします。「不便だけれど不自由じゃないことに気づく」冒険要素や自由な時間が手に入ります。

そんな「気づき」を得られるのが2日目の昼食づくり。一人ひとりが食べる分量を自分で決め火を起こしてご飯を炊きます。渡されるマッチは一人10本。慎重に小木を組む子、何となくマッチをする子、何も考えずに次々マッチをすり「できなかったー!」と明るくマッチをもらいにくる子もいます。当然、「ふ~ん、やらない……」と突っぱねグッとこらえて見守ります。炎に包まれた隣の釜戸を横目に最後の1本を使う決断ができないで泣きじゃくる子。1時間もすればご飯が炊けた子とマッチを使い切って途方に暮れる子にはっきり分かれます。リアル社会のような話です。「果たして、勝てばいいのか? たくさん持てばいいのか?」やがてマッチを2本しか使わず炊けた子がハッと気づき頼みに来ます。「僕の残りのマッチを使い切った子にあげてほしい」と。そして分けてもらったマッチで再び釜戸に向き合う子どもたち。横顔はすすで汚れ涙でぐしゃぐしゃです。子どもたちが長く向き合ったのはきっと釜戸にではなく、「自分に」なのでしょう。

昨年は「しまなみ野外学校5周年特別企画」として「海遍路/山遍路:瀬戸内アドベンチャー320キロ」を開催しました。参加者は15歳から20歳の7名。参加費はなんと無料!これは会社がサッカー事業だけではなく教育事業や地域貢献活動に挑戦し、「しまなみ野外学校」が自然の中でリスクをかけ「生きる力」を育む活動をしていることに賛同してくれるパートナー企業のおかげです。貧富の差が拡大する昨今、子供たちが野外体験を等しく経験できるようにと多大な応援をいただいています。

私がこだわっているのは野外体験や冒険ではありません。それはひとつのきっかけでしかなく社会そのものが冒険だと思っています。一過性のイベントではなく長く未来につながる影響力のある構成を大切にしていてプログラムをつくる上で大事にしていることがあります。

  • ①「プラン通りをなぞるプログラム展開はしない」

自分の興味に情熱を注ぐことのすばらしさや他者の存在に気づき、真似をしたり喜びあったりする時間を大切にしています。

  • ②「私たちが表現しているのは、素材全体の体験」

自然という素材の中で自分が築いたもの全てが生きた時間だったといつの日か思い出す時があるでしょう。それが種となって何かのチャレンジに役立つものだと考えています。

  • ③「異なる生活環境で暮らしてきた子どもたちを意識」

家族と離れ自然の中では思い通りにいかない不安が芽生えてくる子が多くいます。待つことができるのが長めの自然プログラムのよいところです。

  • ④「寄り添うと寄りかからせるの違い」

私たちは親でも先生でも友だちでもなく今を共に旅する同志であり、無人島を目指す仲間で同等の関係。寄りかからせる「便利・安全・快適」ではなくただ寄り添うことにより生まれるクリエイティブな発想と直感(第六感)が研ぎ澄まされないと楽しくないと思います。

JOLAには「おらが大将!」が多いアウトドア業界の人たちの「共通のフラッグ」となってほしい。サッカーではボールがあればふわっとした磁場が生まれます。ボールの前では大人も子どももみな笑顔になります。人は幸せになるのがすべてだと思います。あと、活動を拡げるためには、これからは社会的利益と企業的利益をもっと近づける必要があると感じています。アウトドアの世界はお金とは反比例する部分があるのですが、私はお金は「ありがとうの引換券」だと思っています。利他の精神があれば何事も乗り越えられると思うので引き続き突き進んでください。

取材・文/大久保 徹

 

-profile-

木名瀬 裕 Hiroshi Kinase

株式会社今治 . 夢スポーツ ヒューマンディベロップメント グループ長 『しまなみ野外学校』エディケーションプロデューサー

しまなみ(今治市)から“ 生きる” をテーマにする野 外活動家。海で川で山で若い世代の遺伝子のス イッチを入れまくる野外活動×被災地活動を行う。 旅人→猟師→リバーガイド→ガイド会社経営→野 外教育を通じた人材育成→ FC 今治(Jリーグクラ ブ)初の野外教育『しまなみ野外学校』にて活動。

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