ジャパンアウトドアリーダーズアワード|Japan Outdoor leaders Award

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受賞者

稲松謙太郎

都市型の自然学校だからこそできる教育

稲松さんが勤務する株式会社ノッツは、アウトフィッターの育成を活動方針に掲げている。アウトフィッターは自然体験事業者と訳されることが多いが、広義の意味では自然や人の係わりの中で人生を前向きに生きている人を指す。つまり稲松さんの仕事は人づくりだ。会社の中では営業部に属し、自然とのふれあいを活用した受託事業を担当。理念に人づくりとあるように、事業内容はたんなる体験イベントではない。

「担当して12年になるのが千代田区のこども自然教室です。もともとは56年も前に始まった、区の未来を担うジュニアリーダーの養成プログラムでした。名称は2度変わっていますが方向性は同じで、やる気を育てます。実際、参加した子供たちの多くがOB、OGになるとスタッフとして教室を支える立場になってくれます。高校生になるとジュニアスタッフとして参加し、大学生、社会人になってもその関係性が続いています。子供たちの親御さんの中にもかつての体験者が多く、すごく雰囲気がいい。今や区の伝統行事のようになっているだけに責任者として重みを感じます」

プログラム内容は毎年バージョンアップする。夏は八ヶ岳、冬は新潟県でダイナミックな自然遊びを行なうが、春秋は都内の身近な自然を使った催しを実施。子供たち自身が協力しあい、達成感のあるプログラムに練り上げる。今年はチャレンジハイクを予定している。千代田区のグラウンドがある花小金井(小平市)から、九段にある社会教育センターまでの30㎞弱を、東京の歴史や文化にも触れながら歩いて巡るというものだ。

 

ビジネスエリアの住民が求めているのは地域の結束

「千代田区といえばビジネスエリアで、今では生活者や子どもが少ないイメージがあります。たしかにほかの区に比べると居住人口は少ないんですが、住民どうしの“連携したい”という気持ちはむしろ強いように思います。お祭りに象徴されるように古きよきコミュニケーションの形も残っています。ただ、今は地区のカラー差が大きくなりすぎていて、たとえば秋葉原と神田などは街自体が対照的。その意味でも子どものうちからの交流は大事だと思います。たしかに区内の自然は濃厚ではありません。だからこそ自然の価値に子どもたちは気づくし、スケールが大きな県外の自然に触れたときに感性を伸ばすことができると思うのです。区民という帰属意識の中で同じ時間を過ごし、自然という予測不能な環境の中で一緒に楽しく課題解決に向き合った思い出は生涯の財産になり、大人になってからの結束にもつながります。12年かけて模索してきたことの答えが、ようやく見えてきた気がしています」

 

子どもたちがもっとしゃべりたかったと悔しがる英語キャンプ

もうひとつの代表的な事業が、北区の中学校で行なっている英語キャンプだ。区内12の中学2年生が体験する、異文化交流と国際理解のための行事だが、このキャンプの骨格的な目的は英語が話せるようになることである。選ばれた一部の生徒だけを対象とした特別教育ではなく、区内全部の2年生を対象にしている。毎年1500名ほどの生徒が参加するが、スタッフ募集する外国人留学生も500名、100か国を超える。ディレクターとしてこの大プロジェクトを束ねるのも稲松さんの役割だ。

「外国人留学生はキャンプリーダーであり、英語の先生になるわけですが、必ずしもネイティブ・スピーカーである必要はありません。第二外国語が英語の方にもどんどん来てもらっています。かえって伝わりやすい。なぜなら、彼らも一から努力を積み重ねて英語がしゃべれるようになったからです。中学生の気持ちがわかることが大事なので、ネイティブであることは必須条件ではありません。

単純なセンテンスでも、わかりあおうという気持ちが前面に出れば伝わるものです。留学生には自分の体験をいろいろ話してもらいます。僕も最初は英語が苦手だったけど、間違いながらも少しずつ覚え、いま日本に来てこうやってみんなと英語で話ができているというと、生徒は勇気をもらいます。伝わった喜び、聞き取れた喜び。ここにも生きる力があります。

生徒には事前にドリルのようなものを書いてもらっています。自分の趣味は○○ですというような簡単なもので、1日目はそれを発表するだけ。だいたい、うつむいて棒読みする感じです。でも、キャンプリーダーの留学生が自分の発表を聞いてうなずいてくれたり笑顔を見せると、伝わっているという安心感と、かすかな自信が芽生えてくるんですね。2日目のハイキングが終わる頃には、生徒たちは知っている限りの単語と身振り手振りで、一生懸命に彼らとコミュニケーションをとろうとします」

最終日の終わりに感想を聞くと、もっと喋りたかった、質問をしてみたかったとう声が多い。もどかしい思いをしたのでもこれから英語をしっかり勉強したいという感想も出る。キャンプが醸し出す雰囲気には、そういった潜在的な力もある。

都市型の自然学校だからこそ寄り添える教育もある。それが稲松さんの誇りである。

取材・文/鹿熊 勤

-profile-

稲松 謙太郎 Kentaro Inamatsu

NPO法人国際自然大学校 営業部マネージャー

SAN~Social Active Network of outdooreducation~ 会長

1982年、静岡県浜松市に生まれ、聖隷という教育と福祉施設の集合体のような土地で育つ。学生時のキャンプから本格的に指導者の道へ。2011年に30代の自然体験活動指導者を中心としたネットワーク団体「SAN」を設立。2016年からは国際自然大学校に勤務。主に受託事業を担当し、企業や地方自治体、学校とコラボレーションした活動を展開する一方、スペシャルニーズやユニバーサルに特化した活動を担当している。

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